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  • 執筆者の写真秀夫 小針

20ドル割れとなったNY原油は上昇の期待強い

更新日:2020年5月13日

2020/4/20


NY原油相場は、3月30日時点で一時19.27ドルまで下げ、節目である20ドルを割り込むほど大きく後退し、2002年2月以来18年ぶりの安値圏まで売り叩かれた。1月の高値65.65ドルから46ドル超下げて、下落率は7割に達した。その後はいったん反発したものの、4月15日に再び20ドルを下回る水準まで軟化した。

中国で発生した新型コロナウイルスの影響で、世界の石油消費が大きく減るとの見方が強まったことが背景にある。特に、世界各地で渡航地域が広がったこと、また米国や欧州の一部大都市で都市が封鎖されて物流の流れが抑制されたことで、運輸・運搬用の燃料消費が大きく減速したことが原油需給を緩和させた。

この状況の中、サウジアラビアを中心とす石油輸出国機構(OPEC)と、ロシアを中心とする非加盟国が原油価格の下落に歯止めをかけるため3月に会合を持ったものの、結果は予想外の物別れとなり、一段と原油需給を緩ませる結果となった。しかもサウジアラビアが減産協定を破棄し増産することを表明したため、需給緩和が加速すると市場は判断、ファンドの一段の売り圧力が強まった。

これからの原油相場の行方だが、東京原油は3月の2万円飛び台の安値を起点として、またNY原油は20ドル割れの安値を起点とした上昇トレンドに変わる期待がかけられる。相場は、神経質な一進一退を繰り返しながらも、下げ過ぎの自律的な反発を足掛かりとして、上向く公算が強い。

 理由は、20ドル台の相場が続いた場合、米シェールオイル企業の採算が合わず、多くの米国産原油が生産を中止することになるためだ。またロシアにおいても生産コスト割れとなってしまうため、OPECとの減産協議を再開して、再び産油国同士が協力して減産をすることで、価格を持ち上げようとするシナリオが描かれる。

米シェール企業の状況であるが、ほぼすべてのシェールオイル生産が採算割れとなっている中、4月初めに一部のシェール企業の経営破綻が伝えられた。破綻したのはシェールオイルの開発や生産を手がけるホワイティング・ペトロリアムで、4月に入って早々、連邦破産法第11条の適用を裁判所に申し立てた。これまで米国のシェール関連企業はハイイールド債という社債を発行して資金を調達してきたが、新型コロナウイルスの感染拡大による金融市場の混乱で金利が急上昇、資金繰りが難しくなっていると伝えられている。このため、足元の安い原油価格がこれからも継続した場合、米シェール企業の経営破綻が矢継ぎ早に出てくるとと考えるのは容易である。

 参考までに、最近までの米シェール企業は、掘削技術の革新と南部のバーミアン地域のように生産性の高い地域への開発推進により採算分岐点が下がったことで増産に継ぐ増産となっていた。この結果、シェールオイル生産の採算コストは大きく下がって、現在バレル当り平均で40~45ドルと見られている。しかし20ドル付近まで下げた原油価格に対抗できうる米シェール企業は皆無であることは確かだ。当然、米国シェール企業の中にはは倒産したり合併を強いられる状況が広がる懸念が強い。






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