ハリケーンの影響一巡で反落するコモディティ市場
- 秀夫 小針
- 2020年9月4日
- 読了時間: 3分
2020/09/07
8月下旬のコモディティ市場は、8月27日に極めて強い勢力を持ったハリケーン「ローラ」が米ルイジアナ州に上陸したことを受け、このハリケーンによる被害が懸念されて買いが先行した。この影響により、大豆や小麦などの穀物相場が上昇し、また天然ガスや原油などのエネルギーの分野も買いが主導した。実際、米国立ハリケーンセンターによれば、「ローラ」は5段階で上から2番目の「カテゴリー4」の勢力で上陸、米エネルギー省は31日、戦略石油備蓄基地について、ハリケーン「ローラ」の影響で「長期にわたる甚大な被害」を被ったと報告した。
しかし、予測されていたほどの被害には及ばなかったことから、9月に入ると市況は安定し、NY市場の天然ガスが反落して原油相場も軟化した。また小麦など一部の穀物相場も上昇に歯止めをかける展開となっている。
なおNY原油については、極めて緩やかな下落歩調ではあるものの、8月26日の直近高値43.78㌦から9月3日には一時40.22ドルまで下げ、高値から3ドル以上の下げ幅に至るとともに、心理的な節目である40㌦を割り込みそうな雲行きである。ハリケーンの脅威がひとまず去ったことから、本来の需給相場に入っていることが背景にあるのだが、OPECプラスの協調減産が緩和される状況であることが売り材料視されている。なおOPECプラスは今年5月以降、日量970万バレルの減産を実施してきたものの、8月以降12月までは減産幅を770万バレルに縮小することで合意している。
天然ガスも同様にハリケーンの脅威が落ち着いたことで反落傾向。加えて、トルコで新しい天然ガス田が発見されたこともマイナスの原因となっている。トルコ領域の黒海で推定3200億立方メートル規模の天然ガス田を発見、黒海においては過去最大級の規模とし2023年までに国内供給を開始する予定となっている。発見された天然ガス田は、トルコの国内天然ガス需要の約7年分に相当するという。
このようなエネルギーや農産物市況が軟化する流れを受け、金やプラチナ、銀などの貴金属マーケットも反落する動きである。ドル建てのNY金は、8月7日につけた直近高値2089.2㌦を天井として軟化しており、次の下値の心理的節目である1900㌦を割り込みそうな状況を強いられている。ただし、金相場は下値も堅く、2000㌦付近では上値が重いものの、今のところ1900㌦は固持しそうな雲行きである。
高騰していた銀は、8月7日の直近高値29.91ドルと9月1日の高値29.23ドルの二つによりダブルトップを形成したことで、このまま軟化した場合には高値形成が確認されて本格的な下げ相場となってしまいかねない状況である。
金や銀以上に状況が悪いのがプラチナで、9月3日までの下落によって、一時882.6㌦まで後退し、8月21日の安値903.5㌦と7月30日の安値894.3㌦を下抜き、7月中旬以来ほぼ1カ月半ぶりの安値まで下落した。テクニカルで見ても、8月7日の高値をトップとして、ヘッド&ショルダーを形成したことで、大勢的に右肩下がりで今後推移しそうな状況である。
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